福島原発 事故収束 宣言

 2011年12月16日、野田首相は東電福島第一原発の事故収束を宣言した。

 事故を起こした原子炉が冷温停止状態となったため、工程表の第二段階を完了したものと認め、事故収束宣言をしたということである。


 この件については、日本の新聞だけではなく、海外の新聞でも広く報道されているようである。評価するという向きもあれば、その判断あるいは意図について疑問を呈する向きもある。


 「冷温停止状態と認められる」というのはよいとしても、「事故収束宣言」はいただけない。事故収束とは放置しても何の問題もない状態を指すものであって、38時間注水が停止すれば再臨界に到達する(2011年10月1日時点での核燃料の崩壊熱をもとに東電が試算し発表した情報)という様な状態の核施設に対して行うものではない。


 この件に関しては、東京電力も2011年12月16日付けで「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋 ステップ2完了報告書  平成23 年12 月16 日  原子力災害対策本部  政府・東京電力統合対策室」という文書を発表している。


 この文書の中に「循環注水冷却のイメージ」という図があるので下記に示す。 循環注水冷却が「冷温停止状態」の継続を担保することで「事故収束宣言」に至ったわけで、重要な役割を担っている。

循環注水

 この図で注目すべきところは、圧力容器に注水された水が格納容器へと漏出し、格納容器から原子炉建屋地下に漏出した水がタービン建屋の地下に流出し、タービン建屋地下にたまった水をポンプでくみ上げ浄化してから、再び原子炉の冷却に使用するという構成になっているところである。つまり原子炉建屋とタービン建屋が不可分の関係となっているということになる。


 ここで中部電力のホームページにある「耐震設計の基本的な考え方(耐震重要度分類)」という図を見ていただこう。

chuuden taishin 

 図から明らかなように、原子炉建屋とタービン建屋は耐震設計の分類上では同レベルのものではない。中電の図のほうが明確なので先に示したが、東電の図も見ていただこう。

耐震性 

 この図は現時点では東電のホームページでは参照できないが、東電由来のものであることは間違いない。中電の図では「耐震A,Asクラス」となっている部分が、東電の図では「Sクラス」になっているが、これは規格が改定されたためで東電の図での分類のほうが新しいものである。


 原子炉建屋はSクラスでタービン建屋はBクラスということになる。

 さて先に「循環注水冷却のイメージ」という図を示し、循環注水冷却システムでは原子炉建屋とタービン建屋は不可分の関係にあると指摘しておいた。耐震Sクラスの構造物とBクラスの構造物を一体としてみなす場合、耐震性の評価は当然ながら低いほうのBクラスということになる。つまりこの時点でこのシステムには明白な欠陥があるということが出来る。さらに言えば、循環注水系のうちにある「除染処理」や「除塩処理」の設備の耐震性の問題もある。おそらく耐震性などほとんど考慮されていないだろう。


 マグニチュ-ド8クラスの余震がありうるという報道もあったが、それを考えるとこのシステムがはなはだお粗末なものであることがわかる。

 事故収束宣言も結構だが、溶融した核燃料を原子炉から取り出すまでは早くても10年ぐらいはかかるだろう。10年かかっても取り出せればよいが、取り出せない可能性さえある。それを考えれば、タービン建屋を早期に循環注水系から除外すること、耐震対策と津波対策をともに施した除染設備を新たに用意して現用の除染設備と合わせて二重化をはかることなどが必要だろう。


 福島第一原発の設計がヘボなのはすでに周知の事実だが、現在進められている事故処理も意味不明という印象である。泥縄式のエンジニアリングが許されるのは緊急時だけである。「事故収束宣言」をしたからには、手抜かりのない取り組みを期待したいものである。

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福島原発 核燃料 除去 費用

 2011年12月7日付けの日経新聞に「米社、日本で除染ビジネス」と題して、米CH2Mヒル社の動向を掲載している。CH2Mヒル社は、米国を中心に核関連施設の除染ビジネスを手がけていて、放射線物質の除染分野で20年以上の実績がある。


 同社の副社長であるキーラー氏は、具体的な費用見通しや期間についての明言は避けたが、「施設に核燃料が残っていない場合で、50億ドル(約3900億円)以上の費用と3年程度の期間が必要」と指摘。

 また、核燃料が溶融状態となった福島第一原発を完全に取り壊し、周辺に人が住めるようにするには「兆ドル単位の費用と長い時間がかかる」という見方を示した。


 兆ドル単位といっても、大雑把でなんとも論評のしようもないが、平成22年の日本のGDPが約479兆1726億円(1ドル78円換算で6兆1432億ドル)であるということを考えれば、とんでもない数値であることがわかる。


 仮に5兆ドル(1ドル78円換算で390兆円)を費やし、福島第一の後始末を100年かけて行うとしたら、1年当たり3.9兆円ということになる。仮に1兆ドルとしても1年当たり7800億円である。

 東京電力の2010年度の売上高は約5兆円で、純利益が約1337億円である。東京電力がこのすべてを負担すると仮定すると、必要な事業期間はおよそ500年から5000年程度という計算になる。こういう話は机上の空論というもので、ほとんど意味はないが、仮にキーラー氏の見立てが正しいとしたら、東京電力の手に負えるものではないということがわかる。ということになれば、政府の負担と責任において後始末をする以外に選択肢ないが、日本国政府にも当事者能力の有無に疑義が生じるレベルとも言える。


 ではどうすべきか。核燃料を取り出すことがまず第一で、汚染地域を人が住めるようにするなどということには軽々に着手したりすべきではない。

 現時点では、溶融した核燃料の取出しの目途さえ立っていない。取り出せない可能性を除外することさえ出来ない。こういう状況で除染だ何だというのは馬鹿げている。福島原発の近傍に、溶融した核燃料の処理施設や核廃棄物の最終処理施設を建設して、核燃料の取り出し(可能かどうかは不透明ではあるが)に備えるべきだろう。周辺の汚染地域については住民の退去を進め、福島第一原発および核物質処理施設と居住可能地域の間の緩衝地域とするとともに、核燃料の取り出しを断念せざるを得なくなった場合の備えとすべきだろう。

福島原発4号機 爆発の経緯(3)

 東京電力が2011年11月10日に「福島第一原子力発電所4号機原子炉建屋内における空調ダクトの損傷状況等の調査について」という文書を発表した。


 内容は4号機原子炉建屋の非常用ガス処理系の現況を確認する立ち入り調査の結果報告である。


 文書を見れば、4号機の非常用ガス処理系空調ダクトに原子炉建屋外部から爆発的な圧力が加わったであろうことがわかる。


 下記の写真は非常用ガス処理系空調ダクト(の一部)のなれの果てである。

4号機 空調ダクト 

 これを見て驚くのは、このダクトが一般のビルなどの空調ダクトとほとんど同レベルの代物だということである。使用されている鉄板は厚めかとも見えるが、まさかこんなものが設備されているとは想像もしなかった。まあ3号機の壊れ方の激しさ、4号機の内部の写真を見ると、建屋外部の排気設備と同等レベルの設備を施していたとしても、程度の差こそあれダメージを負った可能性が高そうだから、この程度で問題なかったのかもしれない。


 4号機原子炉建屋の爆発の経緯は、結局東電が当初推測した通り、3号機側から4号機側に水素が流入し、その結果4号機が水素爆発を起こしたということだろう。


 この東電の調査結果からわかるのは、この3,4号機で排気筒を共用した排気処理系は、原子炉建屋内での水素爆発等で排気筒内の圧力が爆発的に上昇するような事態をまったく考慮していなかったということだ。

 そのような事態を想定していたなら、建屋外の排気設備の一部を、建屋内の排気設備よりも強度を低く設計しておき、爆発的圧力が加わったときはその部分がブローアウトして、建屋内設備を守るように設計しているはずである。もっともそのような事態を想定していたなら、はじめから排気筒を共用するなどという設計を採用することなどありえないだろう。


 排気筒やら、中央制御室やらを共用するという不自然な設計を承認するという決断が、どこから出てきたのか不可解である。あえてややこしい道を選択して、事態をややこしい方向にもっていくことに、何も疑問を持たなかったのだろうか?


 福島第一原発は、お粗末なエンジニアリングの見本として、長く語り継がれることになりそうだ。しかしながら、結局のところ福島第一原発の事故は、原子力発電プラントの設計に多大な貢献をすることになるのだろう。と言っても、原発完全放棄ということにでもなれば、その恩恵を受けるのは、東芝、日立などの原子力発電プラントを導入する諸外国ということにはなるのだが。

炉心溶融 格納容器を侵食

 11月30日になって東京電力は、福島第一原発の1号機では炉心溶融の結果、溶けた核燃料の大部分が原子炉圧力容器から格納容器に落ち、格納容器の底部のコンクリートを最大65センチメートル侵食しているという推定を発表した。格納容器は鋼板製でその底部にはコンクリートが打たれているが、溶融した核燃料はコンクリートを侵食し、その鋼板まで残すところ37センチメートルのところまで達しているという。


 この発表は、東電が様々な情報から推定したものであって、実際はどうなっているのかについては、ハッキリ言ってしまえば不明である。状況はこれよりましかもしれないし、もっと悪いかもしれない。


 「いつまでに冷温停止相当の状態にもっていく」とかいう話を耳にするが、冷温停止にすれば終わりというわけではない。核燃料が拡散せずに原子炉内にとどまったのは、必ずしもよかったとは言いきれない。原子炉内に核燃料が高密度の状態で存在しているため、そのまま放置する、あるいは石棺づめにしてしまうということが出来ない。冷却をしてやらないとコンクリートを侵食し、鋼板製の格納容器を侵食し、その下のコンクリートを侵食し、その下の岩盤を侵食し、ということになる。それだけならまだよいが、その過程で放射性物質が撒き散らされることになる。


 現在のところ、格納容器内に核燃料があるので冷却が何とか可能なわけだが、問題は格納容器がいつまでその機能を維持できるのかいうことになる。核燃料を取り出すのが先か、格納容器がその機能を失うのが先かということだが、どちらもありそうだとしか言えない。


 福島第一原発の周辺で、放射能を除染し再びそこに居住しようという動きがあるようだが、とんでもない間違いだ。今回の原発事故はまだ始まったばかりで、現在進行形であることがわかっていないのではないだろうか。幸運にも核燃料を原子炉から取り出すことが出来たとしても、それまでにおそらく10年はかかるだろう。それどころか、いつまでたっても取り出す目途さえ立たない可能性もある。開腹してみたら、手術不能だったということもある。


 チェルノブイリの事故からすでに30年が経過しているが、事故はまだ収束していない。現在進行形で数百年はこの状態が続くだろう。

 福島がそうなる可能性も排除できない。福島第一原発の30キロメートル圏は原則居住禁止とすべきだろう。今から30年後の福島が、現在のチェルノブイリと同様あるいはそれより悪い状態になっている可能性もないとは言えないのだから。

福島原発4号機 爆発の経緯(2)

 『東京電力は27日、福島第1原発4号機にある換気用配管のフィルター部分の放射線量を計測したところ、3号機側から放射性物質を含む気体が4号機側に逆流したとみられる痕跡が見つかったと発表した。』・・・①

 『東電によると、25日にフィルター表面の放射線量を計測したところ、3号機側が毎時約6・7ミリシーベルトと高く、4号機側は毎時約0・1ミリシーベルト程度だった。東電は放射性物質を含んだ気体が、3号機から4号機側に流れた証拠としている。』・・・①


 東京電力は、5月15日の発表でも、4号機の爆発は水素爆発の可能性が高く、その水素は3号機の非常用ガス処理系から排出された水素ガスが、3、4号機で共用している排気筒から4号機の非常用ガス処理系を経由(逆流)して4号機の原子炉建屋に流入したものと説明している。今回の発表は、その裏づけという位置づけになるわけだが、かなり疑わしい。あえて言えば、非常用ガス処理系からの水素ガスの流入はほとんどなかった、ということを証明したのではないかとも言えると思う。

 なぜ非常用ガス処理系からの逆流が考えにくいのかというと、非常用ガス処理系にはバルブが設置されているが通常は閉じられていて、外部と内部は遮断されている。4号機の場合これがオープンされているはずがない。仮に地震の揺れで非常用ガス処理系のバルブより排気筒側で損傷が発生していたとしても、原子炉建屋は密閉構造であって、その一方共通排気筒は当然大気に対して開放端をを有しているので、3号機側からの排気は4号機建屋ではなく共通排気筒の開放端へ向かうと考えるのが自然である。などが逆流説を難しくしているところだ。


 では逆流が全くありえないのかというと、実はそうでもない。まず前提として、非常用ガス処理系のバルブが開いているか、バルブより排気筒側でかつ原子炉建屋内の配管で損傷が生じていて、気体の流入流出が可能な状態になっていることが必要になる。そして原子炉建屋の気密性が保持されていることも必要だ。この場合には共通排気筒の開放端の大気圧の変動の応じて、共通排気塔内の気体が4号機の原子炉建屋に流入する可能性が十分ある。大気圧が経時的に高まる状況では、排気筒側から4号機建屋に気体が流入し、その反対では4号機建屋から流出するということだ。

 3号機の格納容器ベントが開始されたのが3月13日の9時20分で、4号機の爆発が3月15日の6時14分頃(推定)であるから、その間の気圧の変動はどうだったのかということになる。水素爆発の条件は、空気との容積混合比で水素が4.1%から74.2%であるから、1000ヘクトパスカルに対して50ヘクトパスカル程度の大気圧の上昇(累計で)があれば、排気塔中の気体がほぼ100%水素ガスであった場合には、原子炉建屋内に水素爆発の条件を満たす量の水素が取り込まれる可能性がある。

 大気圧以外にも、建屋内の気温の上下によっても共通排気筒と原子炉建屋の間で気体の流入流出が発生する。建屋内の気温の15度程度(累計で)の低下と、1000ヘクトパスカルに対して50ヘクトパスカルの大気圧上昇はほぼ同等の結果をもたらす。

 つまり流入の可能性はあるが、バルブが開いていること、あるいは配管が損傷していることという、ほとんど可能性のないことが前提になっているため、流入の可能性を否定することになっているという状況だ。東京電力は、4号機の非常用ガス処理系の、バルブや配管の損傷について情報を提供する必要があるのは論を待たない。


4号機の爆発、3号機から水素流入か フィルターに逆流の痕跡 2011.8.27 21:31 msn産経ニュース・・・①

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