フォルクスワーゲンのしたことの意味

 フォルクスワーゲンが行ってきた、排ガス規制を事実上無意味にする不正行為について、いろいろ報道されている。

 簡単に言うと、フォルクスワーゲンによる不正は、ディーゼルエンジンを搭載した車に、排ガス試験を実行中かどうか検出するソフトを搭載し、試験中であったら排ガス規制をパスするようにエンジンを制御し、そうでない場合は排ガス規制など考慮しないで制御するというものだ。

 このソフトは、もともとは試験用として、ボッシュ社より提供されたものらしいが、それをモディファイして使用したのだろう。ここで重要なことは、2つの制御モードを持ったソフトと、それに対応したハードウェア(エンジンほか)が実在しているということだ。


 このシステムの搭載が不正行為であるとされているのは、排ガス試験中かどうかを判定して、制御を変えることが問題だからだ。エンジン制御モードが、2種類、3種類と組み込まれていたとしても、それは問題ではない。最終的に、正しい制御モードが実行されるようになっていれば、不正でもなんでもない。


 ここからは、仮想の話になる。自動車のインストルメント・パネルに、2ポジションのスイッチを取り付ける。これをオンにすると、排ガス制御が無効になる。オフにすると有効になる。つまり排ガス制御キルスイッチというわけだ。フォルクスワーゲンの不正ソフトから、排ガス試験中判定ソフトをはずし、その代わりに排ガス制御キルスイッチのオン、オフを検出して排ガス制御を切り替えるように改める。

 どう使用するのかというと、例えば排ガス試験時には、このスイッチをオフにしておく。例えばどこかの山の中だったら、このスイッチをオンにする。例えば、カリフォルニア州だったらオフにする。これは、悪くないアイデアだと思う。数種類の制御モードを選択できるようにすれば、さらに良いことは言うまでもない。


 概念の説明のため、人間が操作するスイッチを持ち出したが、実際には、機械に制御させることになる。いまでは、ありふれているカーナビが、制御モードを選択する信号を出すのが、とりあえず、近道だろう。カーナビは、電源が入っていれば、車の地理的な位置を把握している。その位置に対応して、適当なエンジン制御モード(排ガスの成分を適切にコントロールするためのもの)を選択するように、カーナビをプログラムしておくわけだ。

 都市圏であれば、非常にタイトな排ガス抑制モード、都市の近傍や、交通量の多い都市間道路およびその周辺では、そこそこタイトな排ガス制御モード、それ以外なら、ルーズな制御モードがエンジン制御に適用されるといったことになる。

 一昔前だったら、このようなことは困難だったかもしれないが、現在なら難しいとは思えない。どこでも一律な排ガス制御を適用するということが、適切かどうか検証する必要があるだろう。


 今日まで、このような考えを見かけたことがないのだが、それが少し不思議だ。フォルクスワーゲンの不正の話を聞いてから、これに気づくまで1週間だ。誰かが、何年も前にパテントを取っていてもおかしくない。当て推量だが、トヨタが、ひょっとしたら、パテントを取得しているのではないだろうか。トヨタの場合、ハイブリッドカーへ傾斜しすぎたため、その開発費の回収を考えると、このような方向へ舵を切る選択肢はなかったとも考えられる。燃料電池車の開発投資なども当然影響するだろう。

 ハイブリッド自動車で出遅れた、米国や欧州のメーカーがパテントを持っていたら、この手の方式を標準化する方向へ動かないはずはないと思うのだが、そのような話は聞いたことがない。


 私は、自動車のプロではないから、とんでもない勘違いなのかもしれない。あるいは、そう簡単なものではないのかもしれない。とはいうものの、どちらかといえば、力仕事の類にしか見えないのだが、どうだろうか。


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フォルクスワーゲンのニュース

 新聞では、フォルクスワーゲンの不正に関連した記事が、目立つ。


 2015年9月27日(日)の日本経済新聞朝刊の1面に、『VW車一部販売禁止 スイス、排ガス規制受け 18万台対象』という見出しの記事が出ていた。内容は見出しそのままなのだが、補足的な情報も記載されている。欧州のメディアが一斉に報じていること。対象となるのは、2009年から2014年にかけて生産されたが、販売、登録はされていないいわゆる流通在庫車で、「ユーロ5」と呼ばれる古い排ガス基準対応のエンジンを搭載したものであること。傘下のアウディ、シュコダ、セアトのブランドのものも含まれること。スイスの新車市場は年間約30万台で、フォルクスワーゲングループのシェアは、3割であることなどだ。

 最大の驚きは、禁止となった18万台が、流通在庫車であることだ。フォルクスワーゲングループの、スイスでの年間新車販売台数は、300000x0.3であるから、約9万台。流通在庫は、約2年分という計算だ。9万台という数字は、VWグループの全車種をあわせての数字だから、問題の車種に限定した場合は、2年分どころではなくなる。記事の信憑性を、思わず、疑ってしまう。それとも、自動車販売というものは、こういうものなのだろうか?

 日曜とはいえ、日経の一面に掲載されるだけの価値のある記事なのかもしれない。

 追記
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 『VW車一部販売禁止 スイス、排ガス規制受け 18万台対象』という見出しの記事は、内容に明確ではない点があり、解釈に個人差が出る可能性に気づいたので、誤解の発生を排除するため、記事の全文を引用しておく。加えて、問題点についても、指摘しておく。

 以下引用
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 [ジュネーブ=原克彦]スイスの交通規制当局は25日、独フォルクスワーゲン(VW)による排ガス試験の不正問題を受け、同グループのディーゼル車の一部の販売禁止を決めた。問題となっている不正なソフトを搭載した車種が該当すると見られ18万台が影響を受ける見通し。不正発覚後の各国の対応では最も厳しく、他の国に広がれば経営への打撃が深刻化しそうだ。(関連記事3,5面に)
 欧米メディアが一斉に報じた。「ユーロ5」と呼ばれる古い排ガス基準に対応したエンジンを使う車種が対象で、主に2009年から14年に生産したものの販売・登録はされていないいわゆる流通在庫車。傘下ブランドの「アウディ」「シュコダ」「セアト」も含まれる。
 既に購入した消費者はこれまで通り使用できるほか、最新の排ガス基準に対応した車種は対象外だ。販売禁止の期間は明らかにしていない。
 スイスの新車市場は年約30万台。VWグループはそのうち3割のシェアを占めている。
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 引用終わり

 この記事の問題点のひとつは、「18万台」と「いわゆる流通在庫車」を文脈上で結び付けていることだ。もうひとつは、「いわゆる流通在庫」が、スイス国内のものなのか、たとえばユーロ圏のものなのか、あるいは全世界のものなのかが明示されていないことだ。スイスで、年間9万台程度しか販売のないフォルクスワーゲングループの、一部車種の、スイス国内での、流通在庫車が18万台というのは、個人的には過剰に見える。これが事実なら、大ニュースで、1面に掲載するのも理解できる。この記事で、ほかに驚くべき点はない。販売禁止措置は当然だし、経営への打撃が深刻なのは元から明らかだから、1面に載せる理由にはならない。ほかに取り上げる記事がなかったので、これをもってきただけということなら、18万台は、ユーロ圏、あるいは全世界での流通在庫車の数の可能性が高いだろう。この記事が、1面ではなかったら、そういう解釈に傾いたと思う。

 この件に関して、もっと明確な報道がないか探してみたところ、以下の報道を見つけたので引用しておく。

 以下、NHK NEWSwebから引用。元記事のURLは、http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150927/k10010249131000.html だ。

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問題を受けてスイスの運輸当局は、不正なソフトウエアが搭載された可能性のある「フォルクスワーゲン」と、傘下の企業が製造したディーゼル車について、新たな使用登録を認めず、事実上、販売を禁止する方針を決めました。ただ、すでに登録や販売された車の使用は認めるとしています。(改行)
スイス政府によりますと、対象となる車は、「フォルクスワーゲン」と傘下の「アウディ」や「シュコダ」などが2009年から去年までに製造し、スイスで流通しているディーゼル車の一部に当たるおよそ18万台のうち、まだ登録されていない車だということです。
=====

 このNHKの報道と、日経新聞の記事とは、かなり意味が異なる。NHKの報道では、「18万台のうち、まだ登録されていない車だということです。」となっていて、18万台には、登録されていないものと、それ以外のものが含まれていると読める。それ以外のものとは、おそらく中古車だろう。そして、「スイスで流通している」と明示されている。

 日本経済新聞の記事と、NHKの報道のどちらが、内容的に正確なのかとは別問題だが、文面がより明瞭なのはNHKのほうだろう。報道の場合、理解が分かれるような記事は、書くべきではないだろう。
==========
 追記終わり


 2015年9月27日(日)の日本経済新聞朝刊の3面に、『国交省、排ガス試験強化 VW問題 不正見逃し防止へ検討』という記事が出ていた。内容は見出しそのまま。『米環境保護局は25日、実際の路上走行に近い状況で排ガスを調べる検査を追加し、検査を厳しくすると発表した。』という一文も記されている。


 2015年9月27日(日)の日本経済新聞朝刊の5面では、5面の35%ほどのスペースが、VW関係の記事に割かれている。大見出し、見出し、小見出しが立て込んでいる。EU、2年前に不正把握か 規制運用問われる、という見出しの記事。VW排ガス問題(VW,新興国攻略にも暗雲(中国 ネットに批判あふれる)(東南ア・インド 投資拡大に冷水)(ブラジル 罰金15億円も))という構造の見出しを持つ記事。ミュラー氏 新社長に就任、という見出しの記事が掲載されている。

 EU、2年前に不正把握か・・・という記事には、欧州メディアによる報道として、興味深い情報が記載されている。『独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス試験の不正問題で、欧州連合(EU)が2013年の時点で、VWの排ガス量を不正に操作するソフトウェアの問題を把握していたと欧州の複数のメディアが報じた。』、『欧州メディアの報道によると、EUの欧州委員会共同研究センターの調査で、VWのディーゼル車から試験時の排ガス量を実際の走行時よりも少なくするソフトウェアが見つかった。EUではこうしたソフトは07年から違法になっていたが、「規制当局は問題を追及しなかった」(英紙フィナンシャル・タイムズ)という。』という文章だ。これが事実なら、2014年に米環境保護局が調査に着手するより前の時点で、すでに不正の存在を認識していたグループがあったことになる。これは、EUによる不正の存在を疑わせるもので、成り行きしだいでは、EUもトラブルを抱えることになるだろう。


 2015年9月27日(日)の日本経済新聞朝刊の7面には、『スズキ、VW株すべて売却 資本提携 完全解消へ 株急落も特別利益367億円』という見出しの記事が出ていた。スズキは、VWの発行済み株式の1.5%に相当する439万7千株を保有していた。買い手は、VWの筆頭株主である、ポルシェ・オートモービル・ホールディングSEだ。2015年9月25日に、売却の契約を結び、受け渡しは9月30日の予定だ。価格は公表されていないが、ほぼ時価相当の700億円程度だろうと記されている。最近のごたごたで、VWの株価は40%ほど下落したという話を見かけたが、仮に下落前の株価で売却できていたとしたら、700/0.6で、1166億円となる。この場合の売却益は、830億円程度になったはずだ。

 一方スズキは、2015年9月17日午前の東証の立会外取引で、VWが保有していた、スズキ株1億1161万株を、1株3842円50銭で、買い取っている。


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フォルクスワーゲンが不正を認めるに至った経緯

 2015年9月25日付の日本経済新聞に、フォルクスワーゲンのディーゼル車の排ガスの不正に関連して、『米大学の試験で発覚 基準越え検出、当局へ通報』という記事が出ていた。


 その記事によると、ウェストバージニア大学が、実際の路上で実施した排ガス試験で、基準値の最大35倍の窒素酸化物を検出した。同大学は、2014年5月、これを米環境保護局(EPA)へ通報した。EPAは、フォルクスワーゲンの調査を始めた。EPAは、フォルクスワーゲンの説明に納得せず、2016年発売の新型車の認証を行わないと、フォルクスワーゲン側に通告した。その結果、フォルクスワーゲンが不正ソフトを認めた、ということらしい。


 この件について、EPAが把握していたことは、『実走行で、窒素酸化物の濃度が基準値の最大35倍になる場合がある』という事実だけ。EPAとフォルクスワーゲンのやり取りの結果、EPAの圧力に屈する形で、フォルクスワーゲンが不正を認め、不正ソフトの内容を開示した、これがことの経緯ということになる。結局のところ、フォルクスワーゲン側から、情報が漏れたわけでもなく、不正の仕組みを、外部のものが解き明かしたわけでもなかった、というわけだ。


 仮に、これが事実だったとしたら、フォルクスワーゲンの誤算は、EPAを納得させるに足る材料を提示できなかった、ということになるのだろう。不正の隠蔽については万全を尽くしたが、尻尾を捕まれたときの対応までは、十分に検討していなかったのだろうか?


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フォルクスワーゲンの不正

 ロイターのニュースに、『情報BOX:ディーゼルエンジンとVW「不正ソフト」の仕組み』2015年 09月 24日 15:06 JSTという記事が出ていた。記事のURLは、http://jp.reuters.com/article/2015/09/24/factbox-diesel-engine-vw-idJPKCN0RO0EU20150924 だ。

 
記事には、その不正の仕組みが、解説されており、その出典として「米環境保護局」があげられている。

 その仕組みは、車載の電子制御装置が、ステアリング操作、スピード、エンジン持続時間、圧力から、車の走行モードが試験走行かどうかを判断し、試験走行であれば、排ガス規制モードとするというものだ。記事には、図で解説がついている。



 『排ガスデータ改ざんを隠ぺいするのは困難=VW不正で日産社長』2015年 09月 23日 12:44 JST という記事も出ていた。記事のURLは、http://jp.reuters.com/article/2015/09/23/usa-volkswagen-ghosn-idJPKCN0RN09620150923 だ。

 記事には、『社長(カルロスゴーン社長のこと)は、VW内で何が起きたのかに関してコメントを控えたが、会社内部でそのような不正が行われていた場合、大勢の人が知っていた可能性が高いと指摘。「隠し通すことができるとは思わない」と語った。』と記されている。


 最初にあげた記事の不正について解説は、米環境保護局を出典としてあげているのだが、米環境保護局が独自で解明したのかどうかについては、明示も示唆もない。

 カルロスゴーン社長の発言は、フォルクスワーゲンの内部からのリークがあったとしてもおかしくないと判断しているともとれるし、そのようなことをしていれば、内部から情報がもれるのは時間の問題だと示唆しているともとれる。


 フォルクスワーゲンの場合、少なくとも2009年からだから、足掛け7年は経過していることになる。これが、長いのか短いのかよくわからないが、彼らとしては「もれもしなければ、露見することもない」と考えていたとしか思えない。そうでなければ理屈に合わない。おそらく、この件を知っていたのは、フォルクスワーゲンの内部の大勢の人たちではなく、ごく少数の人たちだったのではないだろうか。(カルロスゴーンのいう「大勢の人」がどの程度の人数を指すのかにもよるが)


 どういう経緯で、このようなことになったのか、非常に興味深いのだが、この事件で一番理解しがたいのは、不正の可能性がある1100万台のうち、米国でリコールが命令されたのは48万台に過ぎないということだ。おそらく、米国で販売された台数が48万だったということなのだろうが、米国で48万台販売するということに、何か重要な意味があったのだろうか?


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